中高年から団塊の世代は、再勉強するぐらいの心構えがほしい。
いまやサラリーマン二毛作、三毛作の時代である。
まだ人生の半ばにすぎない。
いよいよ生涯学習の時代がやってきた。
ニ十四時間会社人間の憂欝N電気のK会長は、「変化の時代にバランス経営などあり得ない」といっているが、サラリーマンにもそれがあてはまる。
激動の時代にバランスのいい人材などはいないということである。
優れた人はたいていどこかにアンバランスなところがある。
仕事の能力もそうである。
むしろ優れたところをどんどん伸ばしていった方がよい。
どんな人にも長所がある。
問題は、それを本気で伸ばそうと努力するかどうかである。
サラリーマンはえてして人との違い、差異をこわがるが、あまりこわがらないのがこれからの人材である。
やる気になれば、勉強する時間などいくらでもある。
といっても、私はサラリーマンの遊びやっきあいを軽く見ているのではない。
麻雀、カラオケ、一杯飲み屋、ゴルフと遊びはいろいろあるが、サラリーマンは遊びによるストレス解消というものが非常に大事である。
ストレス解消がうまくできない人は、今日のようなストレスの激しい世の中では確実に脱落していく。
が、ただそれだけというのは、あまりにも空しいということがいいたいだけである。
ともかく学習の機会などはいくらでもある。
サラリーマンはたしかに忙しいが、反面自分から忙しくしているところがある。
悪い言葉でいえば、忙しいふりをしている。
会社への忠誠心ごっこをしている。
このモノ余りの低成長の時代に会社にみんながみんな、そんなに忙しい仕事などない。
残業時間だってどんどん減ってきている。
この頃は会社の方も二十四時間会社人間を迷惑がっている。
仕事をやればやるほど効率が上がるというのは、みんなが平均的労働をして、努力と成果が一致していたかつての工業化社会の考え方であり、その名残にすぎない。
にもかかわらず、まだ工業化社会の論理だけで走っている人がいる。
これでは勉強の時間などあるわけはない。
企業文化の差を超える技量いまは勉強しなげればならないことが山ほどある。
何よりもまず、昔の知識、体験をある程度否定する、学習廃棄、つまりアンラーニングしていかないといけない。
世の中が変わりつつあるのだから、もう通用しなくなった古い知識や体験を捨てていく努力をすることによって、はじめて新しいことが学んでいけるのである。
つぎに大事なことは、これまでサラリーマンには無縁とみられてきた社外の知識や外部体験を、もっと増やすことを考えなければならない。
世間の話に熱心に貸す耳をもたねばならない。
最近、サラリーマンの聞に、特に団塊の世代あたりに、勉強会が増えできたり、いろいろな趣味のサークル仲間が増えてきたことはいいことだと思う。
会社の中にしか人脈がない、会社にしか情報がない人は、会社にとってもこれからはたいへん困った存在になる。
なぜなら会社は新しいことをどんどんやっていく。
企業を多角化し、戦略の方向を大きく変えることもあり得る。
となれば、いままでの会社の人脈と情報だけでは通用しないところへ出ていくのだから、会社の中のことしか知らない会社人間はあまり使い物にならない。
外の世界の情報とかをどんどん持っている人が強いのである。
むしろそれが会社のためになる。
ある銀行が交際費を、今すぐ商売に役立たなくてもいいから、'もっと外部の情報の人脈づくりのために使え、といい出したのもそういうところにある。
また人生八十年時代というサラリーマンのニラウンド、三ラウンド制を考えた場合に、自分の技量をもっと磨いていないといけない。
会社の中でだけ仕事ができるというのは所詮半人前。
いざというとき他流試合ができるのが一人前である。
これはという人材なら、流通業でも、サービス業でも使える。
それぞれの企業文化のちがいを乗り越えられるのが、本来の技量というものである。
人間のやることにはそんなに変わりがない。
他流試合ができる人材ならけっしてあわてる必要はない。
ベテラン度を否定する一社一心のサラリーマンももっと武者修行をすべきである。
最近は企業のほうもそれがわかりだしてきで、社外の勉強会にお金を出してやろう、あるいは会社同士の人材の交換をやろうというところが増えている。
おれのところのこの人材貸すから、おまえのところのこの人材を貸してくれという具合に。
こうしてムラ社会をこえた、鍛え上げられた人材が育つ。
たとえば新日鉄の開発部の中にHの開発部員を貸してもらって入れてみる。
そうすると新日鉄とHの新製品の開発のやり方は全く違うのだということがよくわかる。
知識や情報を交換し合えば、企業のソフトウェアに厚みがついてくるし、組織にぶら下がっているだけの社員にもかなりの刺激を与える。
「世間は広い」ということがよくわかってくる。
他流試合に強くなる方法などいくらでもある。
あるいは新人類のなまけより、旧人類の勤勉な怠惰や忠誠心の思い込みの深さのようなものが企業をつぶすような気がしないでもない。
旧人類はヨソモノをいまだに認めたくない、異次元の価値を認めたくない、外様を認めたくないという感情の不透明なところがどこかにある。
旧人類というのは、それに脅かされていることがわかっているから、なんとかして自分の既得権を守りたいのである。
すでに鉄の時代が終わったのに、いまだに新日鉄では、やれ八幡系がどうだ、富士系がどうだというラチもないことで旧人類が大騒ぎしている。
たとえば巨人にKというコーチがいるが、彼は外から新しいコーチが入ってくると、いつも、外様はだめだ、巨人軍の伝統に合わないといっていびり出すという。
外様を入れたほうが強いのはわかっていても、自分がその人間に追い越される恐怖心から外様はだめだ、巨人軍はやはり純血であるべきだという。
そういうKコーチのような管理職が中高年には非常に多すぎるのである。
自分のベテラン度を否定されたくない底意が見えすぎている。
しかし、これからのサラリーマンは時には自分のベテラン度を否定するだけの勇気もいる。
なんとか自分のベテラン度を否定されたくない、自分のいままでの知識や体験を傷つけたくない、せっかくの既得権を逃がしたくないという意識が強すぎるから合従連衡も企業合併もうまく進まない。
この国際化の時代に、いろいろな民族交流時代に、日本の企業同士が合併するだけでもうまくいかないのは、ムラ社会の論理を決死の覚悟で守りたがっている一社一心の会社人間が多すぎるからである。
この点は私など非常に遺憾に思っている。
そういつまでも守り切れるものではない。
これ以上ムラ社会の論理を海外に押しつけたら、日本は世界の孤児になってしまうであろおノ。
組織や伝統にぶら下がることしか考えないサラリーマンは、必ず排他的になる。
そして会社から「お前さん、もういらんよ」と肩叩きをされるとカラッポの自分に初めて気がつく。
サラリーマンOBのひとりとして、会社人間のつらいところはよくわかるし、会社からどう冷めたくされようが、しがみついた方が、本人のためにはよいといいたくもあるが、しかしいつまでもそれだけではあまりにも不用心すぎる。
会社から借りた生きがい単身赴任で中高年のノイローゼが増えるのもそこにある。
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